2020年3月10日火曜日

人間の言葉を話す羊の話

ワガドゥグ近郊のサーバという町にある現地の子どもたちの幼稚園にわたしがボランティア先生で通い始めてまだ半年にもなりませんが、自由な教育の中で子どもたちはのびのび、元気はつらつです。
ある日、おやつの時間に園長先生とお茶を飲みながら、キンシャサの我が家で飼っていたコンゴヨウムの話になりました。

コンゴヨウムは体長30cmを超える大型の鳥で、体毛はグレー。尾羽は見事な朱色です。コンゴヨウムは長生きし、人間の言葉を真似るだけでなく言葉の意味を理解し、人間とコミュニケーションを取る能力を持つと言われています。
ところが、我が家のヨウムときたら一言も話さないし、一芸たりともしなかった、というがっかり話を園長先生に披露しました。


キンシャサで飼っていたコンゴヨウムのぽんちゃん(2014.6.18.撮影)


すると、思い出したように園長先生が、小さいときに聴いて大好きだった口承話があるのよと話しくれました。ブルキナファソの話かというと定かではないのだけど、でも私が小さいときによく聞いた話よ、と言いおいて話が始まりました。


昔、ある村に、人間の言葉を話す羊がいました。
そして、家族にとてもかわいがられていました。
しかし、家族が貧しくなって食べ物に困ったある日、お父さんは決心をしたのです。
人間の言葉を話す世にも珍しい羊を市場に連れて行って、わたしたちの羊を可愛がってくれる人を見つけて高い値で買ってもらおう。

―人間の言葉が分かるし、しゃべることもできる、賢い羊だよ~。そんな羊はいらんかね~。

ーへぇ、人間の言葉をしゃべる羊かい。ちょっとしゃべってみてくれないかい。

ー ・・・・・・。
羊は黙ったまま一言もしゃべろうとしません。

―ちっ。何もしゃべらないじゃないか。

そういうやり取りが何度か繰り返されましたが、羊は無言を押し通しました。そして客は皆、去っていきました。

家では、お父さんが大金を持って、鶏や魚を山ほど買って帰ってくると信じて、トマトや玉ねぎなどの野菜をたくさん使って煮込み、あとはお父さんが買ってくる肉と魚を入れるだけという状態で、お父さんと肉と魚の到着を今か今かと待っていました。

市場に人間の言葉をしゃべる羊を連れて売りに行ったお父さんはどうしたでしょう。
お客さんの前では一言もしゃべらない羊だったのですから、お客さんからはうそつき呼ばわりされ、散々な目にあいました。お父さんは羊のことでうんざりし、かんかんに怒って、羊を家に連れて帰ってきました。
皆は、羊をまた連れて戻ってきたうえに、怒り心頭の様子のお父さんを見てびっくりです。

ーまったく!! この羊め!まったくしゃべりやがらない。

人間の言葉を理解する羊はしょんぼりしていました。
そして、人間の言葉を話せる羊は言いました。

ー どうぞ、わたしを食べてください。

賢い羊は、この家で皆と暮らしたい一心で、市場では一言もしゃべらなかったのです。
人間より一枚うわての羊だったのです。

そして、羊は以前にも増して幸せに暮らしました、とさ。