2013年3月10日日曜日

ラン パン パン

絵本”ラン パン パン”の表紙

先日、我が家のヨウム(コンゴのオウム)、”ぽん”が逃避行を果たした。
我が家に来た時にはすでに羽の一部を切られて飛べなくなったと聞いていたのに、三階の我が家のベランダの鳥かごから逃げ出し、庭へ飛行滑降したのだ。
門番の通報(!)で、残念ながらほどなく元の棲家に戻されたのだが、かれ(多分、オス?)の何か主張するような瞳を見ていたら、いじらしさ、みたいなものを感じる。


そして、我が”ぽん”と重なって思い出すのがこの絵本、「ラン パン パン」に登場するクロドリだ。


この物語「ラン パン パン」はインド民話の再話で、1989年に評論社から出版されている。。
ホセ・アルエゴ、アリアンス・ドウィのちょっととぼけた溶けるような線描きの絵に、マギー・ダフによる再話、そして山口文生の訳だ。
(お三人とも、どんな方たちなのかなあと想像してみたり・・・。)


物語は、愛しい女房を王様にさらわれ、怒り狂うクロドリが女房奪還を決意して一人雄雄しく立ち上がり、王宮へ向かい戦いに挑む、という展開だ。

その武装姿が、哀れなくらい!まことに失敬な話だが、笑ってしまう。
小さいクロドリが、刀、盾、かぶとに太鼓まで持って、完全武装でひとり決起する姿!
かれの”武者震い”が見えるよう。
まことにあっぱれなクロドリの覚悟だった。


クルミの半分でかぶとを作り、残り半分に皮を張って戦いの太鼓を作り、雄雄しく胸を張り、野を越え,谷を越え、♪ ラン パン パン ・ ラン パン パン ♪ と太鼓たたいて王宮目指し行進してゆくのだ。


♪ ラン パン パン ・ ラン パン パン ♪

♪ ラン パン パン ・ ラン パン パン ♪


小気味よい太鼓の音が勇ましくも滑稽で、これまた失敬なことだが、笑えてしまうのだ。
でも、太鼓、って士気を高める小道具なのだろうか。


こんな本を日経新聞コラムで見つけた。


書籍紹介文の中に、こんな箇所があった。

「西洋の軍楽には、軍隊の行進をたばねる力がある。隊列のうごきをととのえる効果が期待できる。幕末の諸藩がこれを取り入れようとしたのも、そのためである。」

やっぱり。
太鼓には、士気を鼓舞する効果があるのだ。
この前観たNHK大河ドラマ”龍馬伝”に、江戸の千葉道場で大太鼓をドーン、ドーンとリズミカルに鳴らして剣道の素振りの稽古をする場面が出てきた。
実際の話は分からないが、あの場面で子どもたちは更に勇ましく竹刀を振って練習していたもの。

(この本は残念ながら未読だが、もうじきやってくる日本からの友人に持ってきてもらうことになっている。)


話を「ラン パン パン」に戻すと・・。

主人公のクロドリが太鼓たたいて勇ましく行進する途中で、猫、蟻、木の枝、川に出会い、かれらをクロドリの耳の中に入れて味方につける。
(小さなクロドリの耳とかれらの大きさを問うようなやぼな疑問は持たないように。)
のちのち、戦いのときにかれらは大活躍してくれる。
なんとなく、日本の昔話の桃太郎の鬼征伐を彷彿とさせる場面だ。

物語はこれまた桃太郎と同じようにハッピーエンドでめでたし、めでたし。


♪ ラン パン パン ・ ラン パン パン ♪

♪ ラン パン パン ・ ラン パン パン ♪

本当に雄雄しく勇ましい軍楽隊の擬音語だ。

わたしも、我が”ぽん”にクルミで小さな太鼓を作って持たせてあげたい。