2018年5月9日水曜日

青猫書房 「木と森の本」展 ごあいさつ

青猫書房での企画展、「木と森の本」展が始まって1週間が過ぎた。
2日の初日には、タンザニア・ティンガティンガのペンキ画家、SHOGENさんが、ギャラリーの中、ライブペインティングでとってもすばらしい絵、”想い出の場所で”を描いてくれた。

タンザニアのティンガティンガ村に住む女の子、ザイちゃんがバオバブの大木にさがったブランコをこぎながら、夕方から夜に移る頃、もうじきお母さんが帰っておいでご飯だよと声がする頃、心が自然の中に溶け込んで”無心”になっている女の子の姿を描いたのだとSHOGENさんは言った。

かれの絵を紹介する前に、企画展入口に掲げたわたしのあいさつをここに載せたい。



ごあいさつ

 もう、30年以上も前のことです。
 ネパールの首都、カトマンズのラジンパットという街区に、とても大きな木のある白い家がありました。
そこに、日本から来た女の子が両親と住んでいました。
お父さんは、女の子のために木片とビニルロープで簡単なブランコを作り、大きな木の太い幹にロープを結わえつけました。
女の子はいつもいつもブランコを空高く空高くこいで遊んでいました。お母さんは、いつか女の子がヒマラヤの山々まで飛んでいくのではないかと思うほどでした。
そして女の子は、大きな木の幹にするすると登る楽しみも覚えました。幹に登って、はるか遠い空に浮かぶ白いヒマラヤをじっと見ているのでした。

 女の子が日本に戻って、初めて幼稚園に行った日のことです。
女の子は、天使園という幼稚園の小さな園庭に何本かの木が植えられていることを見つけ、さっそく木の幹に登りました。
園長先生がやってきました。
女の子は、園長先生に、こっちに来てごらん、おもしろいよ、と声をかけました。
ちょっと歳を取った園長先生が梯子を持って来て、どらどらと登って来たのだそうです。
女の子は、木に登って来てくれた園長先生と天使園がこの時から大好きになりました。

 女の子が住む家の裏の”しいの木公園”に、名前の通り、大きな椎の木がありました。女の子は、その木に二つの幹が交差して座り心地の良い場所があることを見つけました。
幼稚園から帰ると、かばんに水筒とおやつを詰めて、小さな座布団を抱えて、しいの木公園に向かうのでした。おやつの時間を椎の木の上で過ごすためでした。周りの大人たちはあまり良い顔をしませんでしたが、女の子の幸せそうな顔を見て、お母さんは女の子の至福の時期を大切してあげようと思いました。
女の子がお母さんから読んでもらって大好きになった「長くつ下のピッピ」のピッピの真似をしたのかもしれません。

 そして、「木はいいなあ」という絵本に出会いました。
女の子も、女の子のお母さんも、この絵本が大好きになりました。

  カトマンズで毎日ブランコをこいで、木に登って遊んでいた女の子は、今、アルプス地方に住んでいます。あの頃の女の子そっくりの元気な女の子のお母さんです。

 木はいいなあ。木がたくさん集まった森はいいなあ。しみじみ、そう思います。
 
小さなお子さんから、ティーンエイジャー、そして大人の方たちにも、木や森にまつわる本をぜひ手に取っていただきたい。その願いから、今回「木と森の本」展を企画しました。
ゆっくり、本屋の”木と森”の中で遊んでいってください。

                                 子どもの本「青猫書房」




青猫書房 「木と森の本」展内にて


カトマンズの大きな木の下でブランコを漕いで遊んでいた女の子は、実はわたしの娘だ。
その娘のことを、以前このブログで、絵本「木はいいなあ」とからめて書いたことがあったが、それを下地に、今回の企画のあいさつ文を書いてみた。
やっぱり、あの思い出が、わたしを木に惹きつけて行ったのだと思うから。
SHOGENさんは、わたしのブログを読んで、かれの世界に入り込んで描き込んでくれたそうだ。
大自然の中で、心を無にしてブランコをこぐ女の子。
ティンガティンガ派の絵は動物を描くものだそうだが、SHOGENさんは女の子のそんな姿を描きたくて、あえて動物は描かなかったとも言っていた。
涙が出る絵だなあ。

すばらしい絵を、SHOGENさん、ありがとう。