2018年3月6日火曜日

雪山讃歌

雪に輝く北アルプス(雪山写真のHPより)
南仏Antibesからアルプスを望む(2015年2月、本人撮影)

雪よ岩よわれらが宿り
おれたちゃ町には住めないからに
おれたちゃ町には住めないからに

シールはずしてパイプの煙
輝く尾根に春風そよぐ
輝く尾根に春風そよぐ

けむい小屋でも黄金(こがね)の御殿
早く行こうよ谷間の小屋へ
早く行こうよ谷間の小屋へ

テントの中でも月見はできる
雨が降ったらぬれればいいさ
雨が降ったらぬれればいいさ

吹雪の日にはほんとにつらい
アイゼンつけるに手がこごえるよ
アイゼンつけるに手がこごえるよ

荒れて狂うは吹雪かなだれ
おれたちゃそんなものおそれはせぬぞ
おれたちゃそんなものおそれはせぬぞ

雪の間に間にきらきら光る
明日は登ろよあの頂(いただき)
明日は登ろよあの頂(いただき)

朝日に輝く新雪踏んで
今日も行こうよあの山越えて
今日も行こうよあの山越えて

山よさよならごきげんよろしゅう
また来る時にも笑っておくれ
また来る時にも笑っておくれ



2月最後の日曜日のこと。夫の母校のある鳥取の工芸展が目黒のギャラリーで開催されているというので、二人で中目黒の駅に降り立った。
信号を渡っていると、チャイムが街中に響いてきた。
懐かしいこのメロディーは何の曲だったかな?
「オーマイダーリン、オーマイダーリン」という詞がふっと頭に浮かんだ。
そして、なぜだか雪を被って真っ白の山々の景色も浮かんできた。
はて?
ますます混乱してきた。
雪山の景色は、平昌オリンピックで感動をもらっていた選手たちの活躍と重なったのかな。
そして。突然、♬ユキヨ イワヨ ワレラガヤドリ♬ の歌詞が口についてきた。
ああ、そうだ!「雪山讃歌」だ。

あらためて詩として読むと山を愛する山男たちの心情が浮かび上がってくる。
調べると、メロディーは、アメリカ民謡。1849年あたりのゴールドラッシュに沸いたアメリカで働く男の娘、クレメンタインが過って川に落ちて亡くなるという悲しい話らしい。
その歌を京大山岳部の部員たちが愛唱歌にしていて、ある冬の数日、山の悪天候で足止めに合った部員たちが嬬恋村の温泉宿で、主将の西堀栄三郎を中心に独自の詞を付けようということでできた「雪山讃歌」なのだそうだ。
西堀栄三郎は後に第一次南極観測越冬隊長となっている。
タロとジロの物語で知られる「南極大陸」としてテレビドラマ化され、西堀さんをモデルにした役を香川照之が熱演したらしい。(原作は、北村泰一著「南極越冬隊 タロとジロの真実」)

「南極大陸 タロとジロの真実」北村泰一著(小学館文庫)


冒頭に「雪山讃歌」の詩(詞ではなく、あえて”詩”と書きたい。)を載せてみた。
しみじみと良い詩だなあと思う。

どうしてこの”いとしのクレメンタイン”が京大山岳部の愛唱歌になったのか。
愛しのクレメンタインが川に落ちて亡くなったということと、部員仲間が山で滑落死したことを重ねているのだとも聞いた。
ゴールドラッシュに沸くアメリカ新大陸で労働者として生活した荒くれ男たちと、「俺たちゃ、街には住めないからに」、吹雪も雪崩にも「俺たちゃ、そんなもの恐れはせぬぞ」と詩にした山男たちと。
同じ心意気みたいなものを感じてしまう。

平昌オリンピックで「限界なんて忘れよう」と力を出し切って雄姿を見せてくれた選手たちの姿とも重なってしまう。

「雪山讃歌」が誕生した鹿沢温泉には、この歌碑が立っているのだそうだ。
また、嬬恋村では正午を告げる防災無線のチャイムにも「雪山讃歌」のメロディ―が使用されているとも知った。

でも、どうして中目黒の街に「雪山讃歌」のメロディーが流れてきたのだろう。

山(と言っても険しい山ではなかっただろうけど)に登ることが大好きだった父がよく歌っていたなあ。と書いたが、わが父は今年95歳になり、元気に独り暮らしをしている。この前も、電話先で、この歌をリクエストしたら、しっかり、時々間違えて(!)歌ってくれた。

アルプスの山々 ”猫の頭”の愛称で知られる猫の耳のような山も見える。(2018年2月娘の夫撮影)

「雪山讃歌」の歌のすばらしさを思い出させてくれたことに、ありがとう。

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