2013年11月27日水曜日

和菓子のほん


雨季と乾季しかない常夏の国、コンゴに住んでいて思うのは、四季の移り変わりを体で感じ、暮らしに工夫を凝らしてきた日本人の”繊細さ”と”智恵”の素晴らしさだ。

高温多湿の季節と、積雪を伴う冬の季節とー。
両極端の季節を挟んでの春夏秋冬の四季を、日本人は色んな暮らしの智恵を持って、楽しんでさえいるように感じてしまう。

日本、っていいなあ。
日本人、ってすごいなあ。

そんな思いに浸りながら、つらつらと考える中で思い浮かぶ絵本が、福音館書店が毎月発行する”たくさんのふしぎ”の中から更に厳選されて発行される、”たくさんのふしぎ傑作集”の中のひとつ、「和菓子のほん」だ。

ちなみに、”たくさんのふしぎ”という福音館書店発行の月刊絵本は、自然,環境,人間の生活・歴史・文化、さらに数学・哲学の分野までのあらゆる「ふしぎ」を毎月、ひとつのテーマについて考え編集される月刊誌で、1985年4月創刊なのだそうだ。
2010年3月号で何と300号を記録し、さらに毎月興味深いテーマで発刊し続けている。


福音館書店 たくさんのふしぎ傑作集 ”和菓子のほん”


「和菓子のほん」という絵本の中に、厳しくはっきりした四季を、”和菓子”という小宇宙の中に凝縮した日本人の素晴らしい芸術観を感じ取ってしまうのだ。

春の桜、夏のせせらぎ、秋のもみじ、冬の雪。
もっといえば、春のひな祭り、夏の鯉のぼり、紫陽花、鮎、、秋の七夕、月見、冬の七五三、雪うさぎ・・・。

”食べる季語”とまで言わしめた和菓子という小宇宙の芸術性を、的確に枝葉末節を削ぎ落として編集された絵本が、この「和菓子のほん」と言える。

もちろん、わたしたちが開店した”夏の絵本屋”でも取り扱った。
また、娘が結婚相手だといって連れてきたかれにも、まず、この”和菓子のほん”をプレゼントした。


さらにわたしの幼少期の思い出にも行き着いてしまう。
そのころわたしたち家族が住んでいた北九州、八幡製鉄所社宅入り口の相生町バス停降りてすぐのところに、”さくらぎ”という和菓子屋があった。
父は、そこでよく四季折々の和菓子をお土産に買ってきてくれた。
もち米でできた”桜餅”、あんこがしっかり入った”柏餅”、そしてつぶしあんの”やぶれまんじゅう”、しろあんの”ミニやぶれまんじゅう”というのもあった。

わたしが学生時代を過ごした長崎には、ポルトガルから伝わり、日本で育った”かすてら”という和菓子もあった。
さだまさし著の自伝小説「かすてぃら」でも、かれは幼少期の思い出をかすてらという”和菓子”と共に書き綴っている。

わたしは、ここ、キンシャサで”和菓子”を再現して外国の人々に日本文化に接して欲しいと思って、白いんげんを砂糖で煮て丸めて、寒天でコーティングした”あんこ玉”を作って、重箱に詰めて振舞ったことがあった。
はたして、どこまで日本文化を味わってもらえたか,心もとないが・・・。


”食べる季語”、”食べる芸術”と表現され、わたしたちが”茶道”の文化と共に誇れる、”和菓子”文化。
著者の中山圭子さんは東京芸大美術科卒。和菓子の魅力にとりつかれ、現在、虎屋の和菓子資料室、虎屋文庫の研究主幹を勤めている。
虎屋は、パリの中心地に店とカフェを構えてもいる。
1980年10月6日に開店。和菓子の魅力を紹介したいということからパリに開店して33年が経ち、今では、客の8割がフランス人だということだ。
安倍真由美さんのイラストも魅力的だ。

さっぱりと編集された中にしっかりとエッセンスが詰まった、この「和菓子のほん」。
日本文化の繊細さに興味を持つ外国の友人にも最適のお土産になると確信する。

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