ブックカバーチャレンジ絵本編の3冊目は、
「パリのおばあさんの物語」(千倉書房)
スージー・モルゲンステルヌ 作
セルジュ・ブロック 絵
岸恵子訳
手のひらよりちょこっと大きいサイズの、パリのどんよりグレーに沈むたそがれ時のアパートが立ち並ぶ街並みの絵。茜色の帯がかかって平積みされているこの絵本を読んで、わたしはいっぺんでとりこになってしまいました。
わたしはこの絵本を初めて開店する”夏の絵本屋”に置きたいと思いましたが、経済専門書の千倉書房に電話して個人取引をお願いするという勇気をどうしても持てませんでした。
だから初回の絵本屋では、私物の絵本を一冊、店内のピアノの上に置いておくだけにしました。すると、ひとりのお年寄りの女性が、この絵本が欲しいから売り物でなければ取り寄せてと懇願されました。
わたしは断れなくてネット注文して、5冊注文すれば送料無料ということで、絵本屋に4冊(1冊はその女性に・・)置きました。すぐに売れてしまい、また欲しいという要望が続き、結局その夏は、ネットで4回注文したのでした。もちろん、もうけなしどころか経費を考えると赤字でしたが。
翌夏は、意を決して千倉書房に電話して、個人取引をお願いしたら、日本版を編集したという千倉真理さんが偶然にも傍にいて、『パリのおばあさんの物語』出版のいきさつをその電話でお聞きし、厚かましくも夏の絵本屋で取り扱える商談と、かのじょのトークのお願いまでしたのでした。
翌夏は、意を決して千倉書房に電話して、個人取引をお願いしたら、日本版を編集したという千倉真理さんが偶然にも傍にいて、『パリのおばあさんの物語』出版のいきさつをその電話でお聞きし、厚かましくも夏の絵本屋で取り扱える商談と、かのじょのトークのお願いまでしたのでした。
真理さんの、この絵本との出会いに感動し、かのじょのご実家である千倉書房で出版にこぎつけるまでの話がまるで一つの物語のようだったのです。
2度目の夏は、絵本の魅力と共に真理さんの話にも共感する女性が続々来店し、一か月間の絵本屋で百冊以上が売れました。
原本では裏表紙に使われていた絵が日本版では表紙となり、茜色の帯が掛けられ、本の表紙を2ページ見開くとパリの町が浮かび上がり、ぽつりと一つの窓に灯りがついている。
ああ、ここに、おばあさんがひとりすんでいるのだな。何十年もの間、異国に住み愛する人と家庭を作り、戦争を経て、今、パリでたくましく可愛らしく生きるおばあさん。
もう一度、若い頃に戻りたいと思いませんか。
いいえ、わたしは十分生きてきたから、これでいいのよ。
いいえ、わたしは十分生きてきたから、これでいいのよ。
この本だけはわたしに訳させてちょうだい、と言った岸恵子さん。何のつながりもなかった岸恵子さんに翻訳を電話で直談判したという千倉真理さん。
真理さんご自身、ご主人の仕事でパリに暮らしていた時にこの絵本と出会い、日本で出版してしまったというかのじょ自身にもいろいろな物語がおありでした。
たくさんの女性がこの物語に共感して連れて帰ってくれた夏の絵本屋のことを、この『パリのおばあさんの物語』とともに思い返します。
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