2020年6月7日日曜日

facebook「7日間ブックカバーチャレンジ」+3冊 ~  ”よろこびの日々”

最後に取り上げたい10冊目は、「よろこびの日々」です。


アイザック・バシェビス・シンガー作、工藤幸雄訳、岩波少年文庫。

「よろこびの日」の題名に続いて、原著では「ワルシャワでおとなになっていく少年の物語」という意味の長い副題が付いている、と訳者あとがきに書かれています。
そうです、これは、ユダヤ系アメリカ人のノーベル賞作家、シンガーさんがワルシャワで過ごした子ども時代を書き綴った自伝的物語なのです。
シンガーさんが60歳を過ぎて、ワルシャワで過ごした子ども時代を穏やかな気持ちで一つ一つをつぶさに振り返りながら書き綴ったのだと思われます。

でも最後の章だけは、大人になってアメリカ移住を決めてワルシャワを出発する前に訪れた故郷の町でのことを書いています。
25年を経て訪ねたかの地での出会いとは・・・。

大人になった今だからこそ、深く深く、シンガーさんの心の動きを理解できたと確信します。


ここまで書いて思い出す、もう一つの物語があります。
フランスでシンガーソングライターとして活躍するガエル・ファイユの、これもまた自伝的物語です。アフリカのブルンジという国でフランス人の父とルワンダ人の母を持ち、13歳まで暮らしたブルンジでの少年時代を書いた物語。

「ちいさな国で」
(ガエル・ファイユ作、加藤かおり訳、早川書房、2016年8月24日)

かれは1982年生まれだから、シンガーさんが育った年代も暮らしも境遇も、そして著した年齢もずいぶんと違っていますが、同じように少年時代を美しい言葉で書き綴り、そして、物語の最後の章で故郷に戻った時のある再会について触れています。



最後にこちらの物語も紹介して、”「7日間ブックカバーチャレンジ」+3冊”を終えたいと思います。 

こういう機会を与えてくれた友人のミチさん、ありがとうございました。

2020年6月6日土曜日

facebook 「7日間ブックカバーチャレンジ」+3冊 ~ ”モモ”

大人になった今だからこそ、もう一度味わってほしい本として。

9冊目は、「モモ」を取り上げたいと思います。 




ミヒャエル・エンデ作
大島かおり訳
岩波書店

大人は皆、忙しい忙しい、時間がない時間がない、と言って毎日を慌ただしく過ごしている。
なぜなのだろう。
子どもと大人、って1日24時間を神様からだか、誰からだか知らないけど、等しく同じだけもらっているはずなのに。

その時間というものの摩訶不思議さをエンデさんは解き明かしてくれました。 
モモ、という不思議ないでたちの小さな女の子の物語を通して。  
しかも、エンデさんは、あとがきで告白されているのです。
 ”この物語は、旅の途中の夜汽車で同室になった、これまた不思議な雰囲気の人から聞いたことを、記憶としてそのまま書いただけのことなので、皆さんの質問には答えられなのです。”
まるで、わたしたちを煙に巻いたように物語は終わるのです。 

わたしももうずいぶん前にこの物語を読んだので、ずいぶんとおぼろげな記憶しか残っていません。 
でも、時間という概念を不思議な視点から見せてくれたモモの物語をもう一度、手に取ってみたいと思います。

この物語にぴったりの雰囲気を持つ絵は、ミヒャエル・エンデさん自身の手によるものだそうです。

もう一つ思い出したことがあります。 
わたしの小さな娘は、いつも、物語を読み終えると、ねえねえ、このお話って本当にあったこと?、と聞いてくるのでした。
わたしは、決まって応えました。 
~本当にあったお話しだといいねぇ~。 
すると娘は安心するようにおやすみを言って枕に載せた頭をくるりに壁際に向けて夢の中へ入っていくのでした。

2020年6月3日水曜日

facebook 「7日間ブックカバーチャレンジ」+3冊~ ”ローラインガルス一家の物語”

 facebookで、”大人になった今だからこそもう一度手に取って読んでほしい本”、として7冊を紹介しましたが、やっぱりどうしても、3冊を追記したいと思って、勝手にこちらにその3冊について書きたいと思います。

まずは、「ローラインガルス一家の物語」です。




これは、現在、我が家の本箱に残っているインガルス一家の物語の本たちの写真です。
テレビ化もされて日本でも人気だった、アメリカの開拓時代のローラ一家の物語です。
ローラは後に、アルマンゾ・ワイルダーと結婚しています。
日本では福音館書店から出版された前半の数冊は、「大きな森の小さな家」から始まります。そして、「大草原の小さな家」へと続いてインガルス一家のアメリカ大陸開拓の旅が綴られます。

わたしたち母子は、ローラの一家の物語をアフリカの夜に毎晩わたしが読んでローラたちの開拓時代を楽しく旅したのです。
夫が週に4日は現場に泊まり込んでいたので、ローラたちのお父さんが町に物資調達のために留守をするローラたち母娘の心細さと重なって、共感するところがたくさん出てきました。一家が開拓のために大陸を南下していくと、バッタの大量発生で畑に被害が出たり、山火事が発生したり、マラリア防止のために家の周りにレモングラスを植えたり、インディアンの訪問を受けてローラが果敢に対応したりする場面は手に汗を握りました。
お父さんが町から持ち帰ってくるお土産にもときめきました。
我が家の場合は、現場から夫が持ち帰ってくる山の幸だったり、日本からの出張者のお土産だったりでしたが。

後半のローラの物語は岩波から出版されたものでした。
わたしたちは、この後半の物語をアフリカに持ち込んではいなかったのですが、夫の会社の出張者が、わたしたちがそれぞれに書いて毎月発行していた新聞(バンギ便り、ボンジュール新聞、そして、ライオン新聞でした)を読んで、続きのローラの物語をアフリカまで運んでプレゼントしてくれたのでした。 
物語の最初のころの大きな森や大草原はまだまだ開拓途上だったのに、物語はいつのまにか「大草原の小さな町」となっていました。
我が家の本箱にはどういうわけか、「長い冬」が上巻しか残っていませんが、この巻では、なかなか春がやってこなくてずっと家にこもらざるを得なかった年のことが描かれています。ちょっと、コロナ禍で自宅待機となった今年の日本の3,4,5月と重なってしまいます。

子どもたちともの物語を最後まで読み通した時代からもう25年以上が経ってしまいました。
もう一度、今度は私自身のためにページをめくって読み返してみようと思っています。