ワガドゥグ暮らし初期に滞在したホテルの庭によく鳩が来ていた。(2019年3月) |
これもまた、夫の事務所に勤務する、モシ族のジナボさんから聴き取った話です。
この国の人たちは、鶏肉を食べるのと同じように、鳩の肉も好んで食べると聞きますが、ジナボさんの一族の女性たちは決して鳩を食べないというのです。
なぜなのでしょう。
話は、かのじょのひいひいひい…おばあちゃんが長旅に出た場面から始まります。
旅の途中で、ひいひいひい…おばあちゃんは、持ってきた食べ物も水もなくなってしまいました。疲れ果てて、しばらくバオバブの木の下でやすんでいました。これ以上歩けなくなってしまったのです。
そこへ、一羽の森鳩(le pigeon de brousse)が飛んできました。
ひいひいひい・・・おばあちゃんが疲れきってすわっているのに気づいた森鳩は川へ行き、一枚の葉に水を入れて、ひいひいひい…おばあちゃんのところへ何度も何度も運んできてくれました。
少しずつ、少しずつ。
一滴、二滴…と森鳩が運んできてくれた水を口に含んで、ひいひいひい…おばあちゃんは少し歩けるようになり、森鳩のあとについて行って川のあるところまでやってきました。
そして、水を心ゆくまで飲むことができたということです。
ひいひいひい…おばあちゃんは、この一羽の森鳩のおかげで助かったのだと心から感謝しました。
そして、水を葉っぱに入れて少しずつ運んできてくれた森鳩の優しさは、子どもたち、孫たちに代々語り継がれて、ジナボさんの一族の女性たちは、けっして森鳩を食べないのだということです。
これはジナボさんの一族の中だけに伝わる森鳩への恩返しなのだそうです。
ジナボさんは、4人の兄弟と2人の姉妹のいる7人きょうだいだと言います。
7人とも、この話をかのじょたちの、語り上手なおばあちゃんから聴いたということです。
おばあちゃんの語り口が素晴らしかったのでしょうか。ジナボさんの知っている限り、ジナボさんのお父さんも兄弟たち男性でさえ鳩を食べることはなかったそうです。
ジナボさんは、おじいちゃんのことは覚えていないと言います。
日本の昔話にも恩返しの話はありますが、恩返しをするのは動物たちのほうですね。
恩返しを受けるのは、人間です。
でも、アフリカでは、動物たちがしてくれたことへの恩返しを子孫後裔までし続ける人間たちの話が多く伝わるのだそうです。それも、一族にだけ伝わる恩返しの話が。
それは、また次の機会に回しましょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿