絵本「ぞうさん」(こぐま社) |
ぞうさん ぞうさん
おはなが ながいのね
そうよ かあさんも ながいのよ
ぞうさん ぞうさん
だれが すきなの
あのね かあさんが すきなのよ
まどみちおさん作詞 團伊玖磨さん作曲の童謡がこんなに絵本になっているのを、昨年、キンシャサに行く前に赤羽の子どもの本専門店「青猫書房」で見つけた。
たった数行の、でも、心温まるこの詩を1ページに1,2行ずつ。
「わたしのワンピース」などの作者、にしまきかやこさんの素朴な挿絵とともにリズミカルにめくって音読を母子で楽しめる絵本だ。
このシンプルな構成が、まどみちおさんの詩の世界の深いところまで連れて行ってくれるように思える。
まどみちおさんが104歳で亡くなって今月末で丸3年。
今年1月から3月までの3か月の予定で、NHKカルチャーラジオは、「まどみちおの詩で生命誌をよむ」が始まった。
案内役はJT生命誌研究館館長の中村桂子さん。
まどさんの詩を、生命科学の視点から掘り下げて読み解いていくという興味深い取り組みだ。
わたしは残念ながらラジオを拝聴できないので、テキストを購入して、週1回の放送分を独りで読んでおもしろがっている。
NHKカルチャーラジオ2017年1月~3月テキスト(NHK出版) |
ぞうさん、といえば、土家由岐雄さん著のノンフィクション童話、「かわいそうなぞう」を思い出す。
秋山ちえ子さんが、1970年から毎年8月15日にラジオでこの童話を朗読されていたということを2年ほど前にちえ子さんが亡くなってから知った。
この童話は、太平洋戦争中の東京・上野動物園でぞうが戦時猛獣処分を受けたという実話を元にして著されたものだ。
1970年初版とあるから、ちえ子さんは、この童話が世に出てからずっと、終戦記念日に朗読を続けてこられたことになる。
中村桂子さんも、カルチャーラジオ番組の第6回 ”つながっていく生きもの~ゲノムと「ぞうさん」”の中で、「ぞうさん」の詩に絡めたエピソードで、これらのことに触れている。
終戦まもなく、まどさんはお子さんと共に上野動物園を訪れたのだそうだ。
でも、動物園の象舎は空っぽだった。ライオンもいなかった。
戦時猛獣処分という命令で殺された動物園の猛獣たち。
がらんどうの動物園でがっかりする子どもたちを見て、まどみちおさんも戦争という暗い影を痛感したことだろう。
まどみちおさんは、空っぽの象舎の前で、
「ぞうってとっても大きくて鼻が長くて耳も大きい動物なんだよ。」
と、お子さんに説明したのだそうだ。
そして、そのときの気持ちをもとに生まれた詩が「ぞうさん」だったと書かれている。
また、この詩で、お母さんから子どもへの繋がりを表すとともに、もうひとつ、「いじめ」もテーマにしていると、まどみちおさんが説明されていたことも知った。
中村桂子さんはテキストの中で、
”動物学校の教室で誰かが「おいお前、鼻が長いなあ。他にそんなおかしな鼻をしている奴はいないぜ。」といっているようにも読めます。子どもたちは違いに敏感です。皆と同じがいい。そしてちょっと違うことに気づくといじめます。人間の学校もそうですから、動物学校だったら大変でしょう。鼻が長いとか、しっぽが短いとか、いくらでも違いを見つけられます。そこでめげてはだめです。「そうだよ。母さんだって長いんだよ。あのすてきな母さんが長くて、ぼくも長いんだから。なんにも悪くないよ」。
まどさんの説明を知ってからは仔ぞうの頑張りも感じながら歌っています。”
と書いている。
母と子の深い絆を感じる、まどみちおさんの「ぞうさん」の詩がますます好きになる。
そんな深い愛情を、母子で寄り添って、この絵本のページをめくりながら味わってほしいと思う。
わたしの本箱に、大切な絵本がまた1冊並んだ。
アジアゾウにアフリカゾウ。
アフリカゾウのほうが体が大きく、耳も大きいんだったな。
ディズニー映画の”ダンボ”は耳がやたら大きく生まれてきていじめられるんだったな。
ぞうさんを描くのが好きだった娘の落書きを、「夏の絵本屋」のトレードマークにしてポスターを作って、3年間だけだったけど夏の絵本屋(+冬の絵本屋)、”L'elephant vert”(みどりのぞう)を開店して楽しんだな。
マレーシアの画家で、ぞうさんの絵をカラフルにコミカルに描くユスフさんとの交流もうれしかった。
毎夏、かれの描いた2枚の水彩の絵を絵本屋に飾ってお客さんを迎えたんだった!
我が家のぞうさんコレクション一部
右端の緑ゾウは、夏の絵本屋開店のお祝いに人形作家のナンシーさんが制作してくれた宝物!
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わたしが滞在する、コンゴ民主共和国、そして隣国のコンゴ共和国一帯には、”マルミミゾウ”という絶滅危惧種のぞうがいる。
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