コンゴのブラックウッドで作られたイエス降誕人形 |
世界のいろいろな町で、クリスマスイルミネーションが瞬いている様子が目に浮かぶようだ。
キンシャサは、雨季真っ只中。
暑くて、クリスマスの雰囲気は感じられない。
また、クリスマスイルミネーションも今のところ見かけない。
キンシャサの我が家にもクリスマスの雰囲気を運びたくて、以前、中村寛子シスターに教えていただいたLimete5番通りにあるカトリック教会のブティックに、イエス降誕の木製人形を買いに行った。
ブティックを入ると、正面に大きな馬小屋がこしらえられてマリア様、ヨセフ様、3人の博士に羊飼いたちの人形が置かれていた。クリスマスが来るのを実感した瞬間だった。
その日購入した降誕の人形が、上の写真のものだ。
この人形たちをリビングに飾りながら一冊の絵本を思い出していた。
ひとりの女の子を通して、メキシコのクリスマスを描いた「クリスマスまであと九日~セシのポサダの日」だ。
絵本「クリスマスまであと九日」の表紙 |
アメリカの絵本作家、マリー・ホール・エッツとメキシコの作家、アウロラ・ラバスティダの共作で、日本では冨山房が最初、「セシのポサダの日」の題名で出版し、その後、しばらく品切れが続いていた。
その、品切れ状態が続いている時だった。
娘は幼稚園の先生にセシちゃんのこの絵本を読んでもらって以来、大のお気に入りとなったのだが、本屋では見つからない。
たまたま近所の文庫の会でこの本を見つけてからは、よく借りてきて読んだことを懐かしく思い出す。
そしてしばらくして、「クリスマスまであと九日」の題で(”セシのポサダの日”は副題となって)、再版されたのだった。
メキシコでは、クリスマスの前の九日間、毎晩どこかの家で”ポサダ”というパーティーが開かれるのだそうだ。
そのパーティーで、紙粘土でできた大きな張子の”ピニャタ”の中にたくさんのお菓子やくだものを詰めて庭にロープで吊るし、目隠しをした子どもたちが順番に棒を持ってピニャタを割る、という大きな楽しみがあるのだ。
メキシコの(おそらく)裕福な家庭で愛情いっぱいに育つセシという女の子が、お母さんから我が家でもポサダを開きましょう、と言われる。
市場に行ってセシちゃん自身のピニャタを選んでいいと言われて選んだのが、金色に光る大きな星のピニャタだった。
セシちゃんがポサダを迎えるまでの日常を、メキシコの町や、学校、市場の様子、お手伝いさんたちとの交流を確かなデッサン力と豊かなタッチで描いている。
1959年初版というから、きっと当時のメキシコの人々はこんな日々を送っていたのだろうとうかがい知れて楽しい。
メキシコを愛したマリー・ホール・エッツの温かな視線がこの作品の端々に注がれている。
セシちゃんが市場で選んだ大きな星が、満タンのお菓子を詰めて吊るされているのが見える。
きらきら光って、セシちゃんには「大切なわたしの星」だと思えてしまう。
メキシコの民族衣装を着ておめかしをしたセシちゃんとお友だちが、誇らしげにマリア様、ヨセフ様の人形を持って、ろうそく行列の先頭に立って行進している。
まるでセシちゃんのかわいらしい歌声が聴こえてくるようだ。
仲良しの人形をいつも抱えるはにかみ屋のセシちゃんが、クリスマスの行事を経て一段階、成長する様子もまた微笑ましい。
1960年にコルデコット賞(アメリカ)を受賞している。
コンゴの人々をこんなに優しく豊かに描写する絵本があればなあ。
世界中のキリスト教の町々で行われるクリスマスのイベントを、今年も楽しく想像してみよう。
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