2019年7月30日火曜日

モシ族の昔話~ごちそうにありつけなかったカエルの話

 これは、ケストナー作の絵本「どうぶつ会議」(岩波)の表紙の絵で、今日の話とは違います。ただ、森の動物の絵が欲しくて、ちょっと拝借しただけです。


絵本「どうぶつ会議」表紙(岩波書店)


森の動物たちが会議を開いている様子の絵の中にも、しっかり、ライオンもカエルも描かれていますね。


今日は、ブルキナファソのモシ族に伝わる、森にすむライオンたち動物とカエルの物語です。
この話は、わたしの夫のプロジェクト事務所に勤務するモシ族の女性(ワガドゥグ大学卒の知的な女性です。)から聴き取りました。
かのじょは小さいときからおばあちゃんが大好きで、話し上手のおばあちゃんからよく昔話を聴いて育ったと言います。特に動物が登場する話が多くて、その中でも、いちばんに思い出すのが、これから話す「ごちそうにありつけなかったカエルの話」だそうです。

かのじょは、おばあちゃんから聴いたたくさんの昔話を今ではすっかり忘れてしまったと言います。なぜ、おばあちゃんから聴いた話を書き留めておかなかったのだろうと残念に思うと話しています。これから母親になるであろうかのじょには、亡くなったおばあちゃんの昔話がとても大切なものに思われるのでしょうか。


さて、この話を始める前に、かのじょから聞いたモシ族の昔の習慣をいくつかまとめておきましょう。

まず、モシ族には食前にも食後にも手を洗う習慣があったと言います。周囲の大人たちから、いつも食事前と後には必ず手を洗うようにと言われていたそうです。

それから、食事の時、食べ物を直接手でつかんで食べる習慣があったそうです。しかも、右手だけを使ったそうです。左手はトイレや鼻をかむときなど汚れるものの時にだけ使ったそうです。(これは、ネパールにいた時に知ったネパール人の習慣と全く同じで、遠く離れたアジアとアフリカで、しかも宗教も違うのにとびっくりしました。)


では、モシ族の女性に聴いた、モシ族に伝わる昔話を始めましょう。


昔々、まだ森ではライオンが王様(le chef)だった時のこと。
ライオンは、おいしいものを手に入れると、森の動物たちをよく食事に招待していたそうです。
動物たちは全員2本の後ろ脚で立って歩くと考えていたそうです。
でも、かえるだけはそうはいきません。
両方の前脚、両方の後ろ脚を交互に使って、ぴょんぴょんと飛び跳ねて食べ物の並ぶところまで行かなければなりません。
他の動物たちは、きちんと前脚である手を洗って、後ろ脚である足で歩いて食べ物のところへ行って席に着きます。
カエルは、しっかり手を洗っても、食べ物の並ぶところにたどり着いたとき、必ず他の動物たちから注意されました。

手が汚いよ、ちゃんと手を洗ってから食卓に着くのが決まりですよ。

はーいと言って、カエルは手を洗いに行って、しっかりと手を洗います。
でも、食卓のところに着いたときには、もう手は汚れています。

もう一度、洗っておいでよ。
はーい。

カエルはまた手を洗いに行きます。
でも、何度注意されて、何度手を洗いに行っても、戻ってくると手は汚れているのです。

ボクの手は洗っても洗っても汚れているのはどうしてだろう。
他の動物たちも思いました。
カエルさんだけは、手を洗っても洗っても、汚れているのはどうしてだろう。


そして、何度も何度も、手を洗いに行ったカエルは、どうしても手がきれいにならないので、とうとうごちそうを食べることができませんでした。
~とさ。


動物は後ろ脚だけで歩くことができると考えて、カエルだけが両前脚、両後ろ脚を使ってぴょんぴょんと跳び歩くと考える。確かに考えてみると、カエルだけは4本足で前進する方法が違いますね。
体も小さい、ぴょんぴょん飛び跳ねるカエルを子どもに見立てて、ご飯の前には手を洗うんですよ、というしつけ話のようにも取れます。


モシ族の子どもたちは、こんな寓話から、食事の前には手を洗うということを習慣づけられたのかもしれません。
ちなみに、昔のモシ族の習慣として、外から家の中に入るとき、履き物を脱いで家に入っていたのだそうです。


2019年7月1日月曜日

どうしても拾ってしまう白い小石と、小石の絵本

ブルキナファソ行きが決まった昨年秋に本屋さんで目に留まった絵本があった。
しおやまみこさん作の木炭鉛筆で描かれた絵本、「そらからきたこいし」(偕成社)だ。
妙に惹かれる不思議な絵本だった。


絵本「そらからきたこいし」表紙


これは、空から降ってきた、キラン!、と光る小石と女の子の話だ。
わたしの小さい頃からの夢がぎっしり詰まった本だ、と思った。


絵本「そらからきたこいし」の中から


わたしは、小さい頃から、石ころ集めが大好きだった。
きらきら透明に光る小石に惹きつけられて、水晶を見つけることが夢だったし、百科事典の”宝石”のところを引っ張り出してダイヤモンド採掘の世界地図を見て、そのダイヤモンド印が集中するアフリカがわたしには輝いて見えた。
そうそう、小学生の時、お友だちの家に、お父さんがブラジル出張の時に買って来てくれたという本物の宝石の原石の標本が置いてあって、それを見せてもらうのが楽しみだった。

今、西アフリカのブルキナファソにいて、週に一回ゴルフを楽しむ”月面ゴルフ場”(わたしが勝手に命名!)には白い小石がコースに散らばっているのだ。
夫からはプレイ中に石ころなんて拾うものじゃなーい!、と注意される。
はい、わかりました、と頷くものの、どうしてもキラン!と輝く白い小石が目に入ってしまう。
無視しようとしても、つい一個だけ~と拾ってポケットに入れてしまう。

先週は、雨が降った翌日だったから、さらに白い小石がキラキラと目について、拾うことの方に気持ちがいってしまい、スコアはめちゃくちゃだった。さらに地面ばかり見ていたせいか乗り物酔いみたいになって気持ち悪くなってしまった。

で、今日は、拾いません、と誓ったのに、数個だけ、と思ってまたまた小石を拾ってしまった。夫から見つかって注意されてしまったが。

これ、この通り。

ワガドゥグの”月面ゴルフ場”で見つけた小石


きれいでしょ!
1,2センチ四角の白い小石。
どうしても、拾ってきてしまう。

絵本「そらからきたこいし」を思い出した。

それから、赤いキランと光るまほうの小石を見つけたロバくんの物語、「シルベスターとまほうの小石」(評論社)も。




もう一冊、夏の山でキランと光る水晶を見つけた女の子の物語、「フルリーナと山の鳥」(岩波書店)も。





小さいときから、わたしに夢を与えてくれた小石たち。
月面ゴルフ場で、これからもこっそりひっそり、わたしの小石拾いは続く、かな。