毎日、寒い日が続いている。
赤道直下のキンシャサから帰国して久しぶりの冬だから、ますます寒さが身に応える。ヒートテック下着を2枚重ね着しているのに、寒い寒い!
でもなぁ。
50年前のわたしの故郷、北九州の八幡の冬はもっともっと寒かったな。
冬の朝、土の中に埋まっている宝石の原石のようにキラキラと輝く霜柱を踏みながらサクサクという感触を楽しみながら登校していたし。
洗濯物を干したまま朝を迎えた時は、洗濯ものたちに”つらら”がぶら下がっていた。(当時は、脱水機付きの洗濯機なんてなかったしな。)
そして、何よりの楽しみは、冬の夜バケツに水を入れてベランダに出して寝ると、朝には、しっかり全面に氷が張っていた。2、3センチの厚さはあったはず。
それから、手袋にそっと雪の一粒を受けて、小さな六角形の雪の結晶を観たりもした。
家に帰りつくと、ストーブの前に陣取って、母の温かい手でかじかんだ耳たぶを覆って温めてもらったな。
今冬、いちばんの冷え込みになると天気予報で聞いて、よし、氷を作ろう!と、夜、プラスチック容器に水を張ってベランダに出しておいた。
しかし、この通り!
なんとがっかり! 氷は半面にやっと数ミリ程度張っただけだった。
その時、思い出した写真絵本がある。
「ひとしずくの水~A DROP OF WATER」(あすなろ書房)だ。
写真絵本「ひとしずくの水」(あすなろ書房)ウォルター・ウィック写真
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”水”のいろいろな状態の瞬間を撮ったこの写真絵本は、まさにわたしの宝物だ。
水がぽたりと静かに滴る瞬間。
水がしぶきを上げて落ちる瞬間。
王様の冠になった!
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わたしは、幼稚園で毎月配本されていた絵本の中に、雨が地面に跳ねる一瞬を王冠のように描く絵を見て、わあ!雨って跳ねたときに王冠みたいになるんだ!と感動して以来、雨が地面に着地する瞬間を幾度となく観察してきたが、この絵本の写真家が本当に水が冠のようになった一瞬を映像としてとらえていることに深く深く感動してしまった。
表面張力、毛管現象、蒸気、気化、液化。
霜、露。
くもの巣にくっついた露のしずくの美しいこと!
水滴ビーズのネックレス!
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そして、氷、雪。
雪の結晶の美しさといったらなかった!
自然が作った、二つと同じ結晶はないという摩訶不思議さにはまいったな。
写真絵本「ひとしずくの水」より |
こんな美しい自然からのプレゼントに魅了されて、雪の結晶を撮り続けた写真家がいた。
それを知ったのは、絵本「雪の写真家 ベントレー」(BL出版)を通してだった。
絵本「雪の写真家 ベントレー」(BL出版)J.B.マーティン作 M.アゼアリアン絵 |
150年以上も前にアメリカの豪雪地帯に生まれたベントレーは、最初は、手書きで根気よく雪の結晶を描き続け、両親にカメラを買ってもらってからは顕微鏡写真を工夫に工夫を重ねて撮り続け、庭で幻燈会を開いて皆に雪の結晶の美しさを観てもらって楽しむのだった。
小さな村で暮らすひとりの農夫が自然の美しさに魅了されて、皆にも観てもらいたいと写真を多く撮りためて、ついにべントレーは世界的にも雪の専門家として認められて、写真集が出版された。
写真集が完成してわずか1か月後に亡くなったベントレーの記念碑が村の真ん中に建っているという。
”雪を愛したベントレー”
ジェリコが生んだ
世界的な雪の専門家
作者のジャクリーン・ブリッグズ・マーティンは、ベントレーについて、
”誰も気づかなかった美をみつけ、それを他の人にも見せたいと願ったウィリーの夢と努力、そしてお金ではなく雪の美しさこそ『宝物』であるという信念が、私の心を強く動かしたのです。”と語っている。
メアリー・アゼアリアンによる木版画の挿し絵がこの絵本の魅力を倍増している。
また、この絵本は1999年度のコールデコット賞を受賞している。
”Sense of Wonder”
この気持ちを忘れずに生きてゆきたい。
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