2014年8月3日日曜日

スイミーと、キンシャサのンブンジ

娘が小学校2年生のときの光村図書出版の国語の教科書に「スイミー」の話が載っていた。

黒い小さな魚のスイミーは、とても賢く泳ぎも得意だった。
かれだけ黒くて、兄弟たちは赤い。
ある日、兄弟たちが大きな魚に食べられてしまい、スイミーひとりぼっちになってしまう。
ひとりぼっちのスイミーは、さまざまな海の生き物たちに出会いながらひとり旅を続ける。
そして、大きな魚におびえながら岩陰で暮らす、兄弟そっくりの赤い小さな魚たちを見つける。
スイミーは、いっしょに泳ごうと誘うのだが、小さな赤い魚たちは出てこない。
スイミーは、皆で集まって大きな魚の形になって泳ごうと発案する。
そして言うのだ。
「ぼくが目になろう!」
と。

黒い小さい賢いスイミーの発案で、大きな魚になった

版画タッチの絵がとても優しくきれいだった。
そして、大きな海の中を放浪するスイミーの旅で出会う海の生き物たちの描写もまた、うっとりするほどきれいだった。

にじいろのゼリーのようなくらげ
水中のブルドーザーみたいないせえび
ドロップみたいな岩から生えている、こんぶやわかめ
風に揺れる、ももいろのやしの木みたいないそぎんちゃく

小学校2年生だったむすめがこの話に夢中になるのが理解できた。
むすめは、フエルトの布の上にちくちくと針でたくさんの赤いビーズで魚の形に留めていき、黒いひとつのビーズで目を置いた。
そのフエルトを魚の形にカットして2枚重ねて中に綿を詰めてスイミーたちのブローチに仕立てて、わたしにプレゼントしてくれた日をなつかしく思い出す。
あのかわいいブローチ、どこに仕舞ったのだろう・・・。


オランダの作家、レオ・レオニ作・絵。
谷川俊太郎訳。
”スイミー”(好学社)


そんなスイミーの話をふつふつと思い出す小さな小鳥たちの集団の出会いを、わたしはキンシャサのゴルフ場でいつも楽しんだ。

茶色の体毛の小鳥たちですずめに似ているのだが、大きさはすずめより3、4割がた小ぶりだった。
キャディに訊くと、ンブンジMVUNZI、リンガラ語ではそう言い、フランス語の名前は知らないと言った。
朝、夕や、乾季の太陽の出ない昼間など、涼しいときに群れになって餌を求めて出てくるのだ、とも教えてくれた。

マダム、ンブンジがいるよ。
わたしがこの小さな鳥たちの集団が好きなのを知っているキャディはいつも教えてくれた。

「(ン)文治」
こんなネーミングをこっそり与えていたりして。


群れを成して行動する小さな鳥、ンブンジ

ンブンジたちがゴルフ場芝生で餌をついばむ

そんなかれらの集団で飛び交う姿を見るたびに思い出すのが「スイミー」の話だった。

小さなスイミーたちが、仲間で大きな魚の形になって大海を泳いで生活したように、ンブンジたちも大きな鳥の形になって大空を飛んでいるように思えたのだ。
本当に小さな小人のような小鳥のンブンジの姿にいつもエールを送った。
「あなたたちも小さな小鳥だけど、大きな鳥になって大空を飛んでスイミーのようにたくましく生きて行くんだよー!」

何度も何度も、プレイの合間にンブンジたちの集団で飛ぶ姿を撮ろうと試したが、いかんせん、夫のお下がりのデジカメではシャッターチャンスがずれて失敗の連続だった。
スイミーたちが大きな魚になって泳いだように、ンブンジたちも大きな鳥になって(!)大空を泳いでいた姿を紹介したかったな。


これが、キンシャサからの最後のブログになります。
キンシャサ時間の8月3日夜便で、キンシャサを発ち、イスタンブール経由で帰国します。
しばらくは、キンシャサ・こぼれ話として少しずつ更新していきたいと思っています。
それでは、キンシャサからさようなら!

0 件のコメント:

コメントを投稿