1月に南仏の娘のところに滞在したとき、かれらの本箱で二冊の懐かしい絵本と一冊の本に再会した。
「すばらしいとき」(福音館)と「OWL MOON 月夜のみみずく」(偕成社)、そしてレイチェル・カーソン著の「センス・オブ・ワンダー」だ。
娘たちが父親,母親になると知ったとき、かれらに贈った三冊だった。
今日は、冬が完全に終わってしまう前に、「OWL MOON 月夜のみみずく」(偕成社)について書いてみたいと思う。
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絵本 OWL MOON 月夜のみみずく(偕成社) |
ジェイン・ヨーレン詩、ジョン・ショーエンベール絵、くどうなおこ訳による絵本。
作者二人はニューヨーク生まれ。訳者も入れて3人とも1934年、35年生まれということだ。
1987年に初版が発行され、日本では1989年に偕成社から発行されている。
また、1988年度のコルデコット賞を受賞している絵本でもある。
絵本のページをめくるとまず、作者二人のメッセージに出会う。
こどもたちをみみずく探しにつれていってくれた夫に J.Y
いつか、みみずく探しにいく日をむかえる孫娘ニッサに J.S
こんなメッセージにほのぼのしながらページをめくると、ジョン・ショーエンベールのデッサン力豊かに描かれた絵が目に飛び込んでくる。
わたしたちはさっそく、夜明け前の空気がぴーんと張り詰めた冬の森に入り込んでいくのだった。
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冬の森を父と娘は進んでいく |
「 冬の夜ふけのことでした
とうさんと わたしふたりきり 森にむかって あるいたわ
とうさんといっしょにこうやって でかける夜を わたし ずっとずっとまってたの
とうさんはよびかけた
”ほうー ほう ほ・ほ・ほほーーーう”
わしみみずくの うたごえで
”ほうー ほう ほ・ほ・ほほーーーう”
みみずくにあうために 勇気だっているのよね
そのときなの やまびこのように へんじがかえってきた
木のあいだをくぐりぬけて ”ほうーほう ほ・ほ・ほほーーーう”
まるでね とうさんとみみずくは おしゃべりしているみたいだった
わたしたち じっとみつめあった」
初めてみみずく探しに連れて行ってもらう女の子の胸の高鳴りが、夜明け前の白い森の空気の中からトクントクンと聴こえてくるかのようだ。
父が娘を見守る温かい視線、そして父への強い信頼感。
そんなものもページの端々からしっかり伝わってくる。
そして、とうとう父さんと女の子は神聖さすら漂う大きな”わしみみずく”に出会う。
自然の神々しいまでの美しさや偉大さを体全体で感じた女の子が父におんぶ(だっこ?)されて幸せ感満載で進む先に家路が続くのだった。
わたしは、表紙の絵が大好きだ。
月に照らされた父と小さな娘の深い絆がしっかりと描かれた良い絵だなあ、としみじみ思える。
ジェイン・ヨーレンの詩(なのだ!)が胸に染みてくるのは、かのじょ自身の経験に裏打ちされたものだからなのだなあ、と思う。
日本での発行にあたり、かのじょからこんなメッセージが寄せられたそうだ。
「息子や娘たちが小さい頃、夫はよく近くの森にみみずくを見に連れて行きました。
この絵本で、わたしは、そんな父と子の心あたたまるふれあいを描きたかったのです。
今では子どもも大きくなり、それぞれに興味のつばさを広げていますが、
あのふしぎな神秘的な美しさにみちた夜の森での体験は、今も生き生きと覚えています。」
わたし自身も、小さかった頃、父によく連れて行ってもらった神社の森の川原での冒険(に思えた!)や、夕飯の後の夏の野原道の散歩(九州の夏の夕暮れは19時半過ぎだった!)といった、今でもしっかり五感に染み込んでいるとても良い体験を多く持つ。
わたしの子どもたちも覚えているだろうか。
中央アフリカに住んでいた頃、夫がどうしても子どもたちを連れて行きたいと言い張って、道なき道を四輪駆動で走った日々を。
森の塩沼に群がるゾウの群れを見に熱帯雨林に入っていったこともあった。
スーダン国境に広がる名ばかりの国立公園では、川にドテーっと寝そべるカバの群れにびっくりし、ウンチをかけられても平気にポヤポヤと眠り続けるカバたちに呆れ返ったこともあった。
アフリカの夜空に広がる天の川や星座の見事さに息を呑んだりもした。
わたしの子どもたちには、今度はかれらの子どもたちと共に自然の中でいろいろなものを見て触って感じる楽しみを持ってほしいと思う。
「沈黙の春」の著者として有名なレイチェル・カーソンも、かのじょの著書「センス・オブ・ワンダー」で、自然の中で探検し発見する喜びに胸をときめかせる体験を子ども時代に(大人も共に)させてほしい、と書いている。
美しいもの,未知なもの、神秘的なものに目を見張る感性、"Sence of Wonder"を育むことの大切さ、そして自然の中での体験を子どもと共有する喜びを、絵本「OWL MOON 月夜のみみずく」は教えてくれる。