2014年3月25日火曜日

"Diapason" ~ 地球シンフォニー

いよいよ日本に春到来!
東京で桜開花の報を電子ニュースで受け取り、熱帯雨林の広がるキンシャサから、こんな森の絵本を紹介したくなった。


この1月、フランスで字のない縦長の絵本を見つけた。


フランスの絵本 Diapason 表紙 33×14.6cm

Diapason。
音域。

フランス語だ。
なるほど。
表紙の横線五本は、五線譜なのだな。

開けると、ページがつながっていた。


蛇腹状につながった頁


モノクロにわずかに緑色が添えられたシンプルな色彩だ。
全開すると。

広大な森の風景が広がっている!
すごい!

まるで、森林の中に入り込んだような、そして、静かに、かすかにメロディーが聴こえてくるような、静寂さを感じてしまう。



一頁め。
指揮者が一歩、森の中に入り込むところから。

一本の高い木を見上げる。
その高い木の上に上った指揮者のタクトが振れる。
静かな序奏の音楽が聞こえてくるようだ。

少しずつ、森の中にさざ波が立ってきたぞ。


森じゅうの葉っぱたちがおどり始めた。
月の満ち欠けにざわめくように、森からの音楽にもさざめき立つ海の様子すら見えてくる。


今や、指揮者は地球に立っているかのようだ。


まるでお月様から宇宙に向かって指揮しているような・・・



いよいよ、クライマックスだ。

宇宙に向かって、大きくタクトが振られる。




森を突き抜けて宇宙へ


すべての生命の息吹があちらから、こちらから、響き合っている。

偉大な地球シンフォニーが聴こえてきた。

自然の奏でるハーモニーだ。



終演


そして。

終演。

静かな余韻が森じゅうに漂うときだ。

ほら、まだ、葉っぱたちが戻ってきていない、でしょう。

素晴らしい地球シンフォニーだったな。


余韻を楽しもう。




指揮者、退場


指揮者退場。

このあと・・・。

さらにまた、新たな生命のメロディが始まるような、そんな最終頁でしめくくられる。


そんな絵本をフランスで見つけた。
レティシア・ドゥヴェルネ作
パリ生まれの絵本作家、イラストレーター。
出版社; Joie De Lire 2010年


いつかの夏の絵本屋でこの絵本を広げて飾れたらな。
わたしは独りニンマリ空想するのだった。


2014年3月10日月曜日

OWL MOON  月夜のみみずく

1月に南仏の娘のところに滞在したとき、かれらの本箱で二冊の懐かしい絵本と一冊の本に再会した。
「すばらしいとき」(福音館)と「OWL MOON 月夜のみみずく」(偕成社)、そしてレイチェル・カーソン著の「センス・オブ・ワンダー」だ。

娘たちが父親,母親になると知ったとき、かれらに贈った三冊だった。



今日は、冬が完全に終わってしまう前に、「OWL MOON 月夜のみみずく」(偕成社)について書いてみたいと思う。


絵本 OWL MOON 月夜のみみずく(偕成社)


ジェイン・ヨーレン詩、ジョン・ショーエンベール絵、くどうなおこ訳による絵本。
作者二人はニューヨーク生まれ。訳者も入れて3人とも1934年、35年生まれということだ。

1987年に初版が発行され、日本では1989年に偕成社から発行されている。
また、1988年度のコルデコット賞を受賞している絵本でもある。

絵本のページをめくるとまず、作者二人のメッセージに出会う。


こどもたちをみみずく探しにつれていってくれた夫に      J.Y

いつか、みみずく探しにいく日をむかえる孫娘ニッサに  J.S


こんなメッセージにほのぼのしながらページをめくると、ジョン・ショーエンベールのデッサン力豊かに描かれた絵が目に飛び込んでくる。
わたしたちはさっそく、夜明け前の空気がぴーんと張り詰めた冬の森に入り込んでいくのだった。


冬の森を父と娘は進んでいく



「 冬の夜ふけのことでした

とうさんと わたしふたりきり 森にむかって あるいたわ
とうさんといっしょにこうやって でかける夜を わたし ずっとずっとまってたの

とうさんはよびかけた
”ほうー ほう ほ・ほ・ほほーーーう”
わしみみずくの うたごえで

”ほうー ほう ほ・ほ・ほほーーーう”
みみずくにあうために 勇気だっているのよね

そのときなの やまびこのように へんじがかえってきた
木のあいだをくぐりぬけて ”ほうーほう ほ・ほ・ほほーーーう”
まるでね とうさんとみみずくは おしゃべりしているみたいだった

わたしたち じっとみつめあった」


初めてみみずく探しに連れて行ってもらう女の子の胸の高鳴りが、夜明け前の白い森の空気の中からトクントクンと聴こえてくるかのようだ。
父が娘を見守る温かい視線、そして父への強い信頼感。
そんなものもページの端々からしっかり伝わってくる。
そして、とうとう父さんと女の子は神聖さすら漂う大きな”わしみみずく”に出会う。
自然の神々しいまでの美しさや偉大さを体全体で感じた女の子が父におんぶ(だっこ?)されて幸せ感満載で進む先に家路が続くのだった。

わたしは、表紙の絵が大好きだ。
月に照らされた父と小さな娘の深い絆がしっかりと描かれた良い絵だなあ、としみじみ思える。


ジェイン・ヨーレンの詩(なのだ!)が胸に染みてくるのは、かのじょ自身の経験に裏打ちされたものだからなのだなあ、と思う。


日本での発行にあたり、かのじょからこんなメッセージが寄せられたそうだ。

「息子や娘たちが小さい頃、夫はよく近くの森にみみずくを見に連れて行きました。

この絵本で、わたしは、そんな父と子の心あたたまるふれあいを描きたかったのです。

今では子どもも大きくなり、それぞれに興味のつばさを広げていますが、

あのふしぎな神秘的な美しさにみちた夜の森での体験は、今も生き生きと覚えています。」



わたし自身も、小さかった頃、父によく連れて行ってもらった神社の森の川原での冒険(に思えた!)や、夕飯の後の夏の野原道の散歩(九州の夏の夕暮れは19時半過ぎだった!)といった、今でもしっかり五感に染み込んでいるとても良い体験を多く持つ。

わたしの子どもたちも覚えているだろうか。
中央アフリカに住んでいた頃、夫がどうしても子どもたちを連れて行きたいと言い張って、道なき道を四輪駆動で走った日々を。
森の塩沼に群がるゾウの群れを見に熱帯雨林に入っていったこともあった。
スーダン国境に広がる名ばかりの国立公園では、川にドテーっと寝そべるカバの群れにびっくりし、ウンチをかけられても平気にポヤポヤと眠り続けるカバたちに呆れ返ったこともあった。
アフリカの夜空に広がる天の川や星座の見事さに息を呑んだりもした。


わたしの子どもたちには、今度はかれらの子どもたちと共に自然の中でいろいろなものを見て触って感じる楽しみを持ってほしいと思う。

「沈黙の春」の著者として有名なレイチェル・カーソンも、かのじょの著書「センス・オブ・ワンダー」で、自然の中で探検し発見する喜びに胸をときめかせる体験を子ども時代に(大人も共に)させてほしい、と書いている。

美しいもの,未知なもの、神秘的なものに目を見張る感性、"Sence of Wonder"を育むことの大切さ、そして自然の中での体験を子どもと共有する喜びを、絵本「OWL MOON 月夜のみみずく」は教えてくれる。

2014年3月1日土曜日

東公与個展 ”おかしな どうぶつ園” 

パリ在住の童画家の東公与(あずま・きみよ)さんから、今年は桜の季節に神楽坂で個展を開きます、とメッセージが添えられて、わたしのメイルアドレスに案内が送られてきた。


はがきには、とってもおめかしをしたピンクのぶたのイラストが描かれている。

個展名が、”おかしなどうぶつ園”。なんだか愉快になってくるネーミングだ。





はがきの案内を見ると、まさに桜満開の季節。4月6日から20日まで。神楽坂のサロン・ド・テでの個展だそうだ。午後ティーを楽しみに、どうぶつ園に行く気分かな。きっと楽しいだろうな。


以前開かれた恵比寿の日仏会館での公与さんの個展の様子を、このブログでも書いたことがある。
会場入り口に掛かった、海の底に広がる青い街の絵の連作がとても印象的だった。
今年の個展は、会場の雰囲気から明るい色合いの絵を描いてみた、と1月にかのじょのパリのお宅を訪れたときに話されていた。

さて、どんなゆかいなどうぶつたちに出会えるのだろう。

また、公与さんの個展ポスターがかのじょらしい!

東公与さん個展の案内ポスター

カラスを採用!!
童謡で歌われ親しまれていたカラスが、いつのまにか憎まれ役に変わってしまった。
公与さんが描くと、カラスだってこんなにおしゃれなのだ。

わたしは、今春の公与さんの個展には行けないが、わたしの思い入れのある街、神楽坂で開かれるなんて、とってもうれしい。

どうぞ、皆さん、公与さんの描く「おかしなどうぶつ園」を訪ねてみてください。
そして、その園長さんと話してみてください。
すてきな出会いがありますように♪