ポアント・ノアールは大西洋に面していて、地図を観ると湾になっているのがわかる。(下の地図参照。)
かのじょたちは、よく内海、外海で泳いでいたのだそうだ。外海は急流だったから気をつけていたという話まで楽しそうに話す前向きな女性だ。
かのじょの話すポアント・ノアールの町は、マリンスポーツを楽しんだり、海辺の美味しい海鮮料理のお店で新鮮な食材に舌鼓を打ったり、まるでアフリカの海辺の町とは思えないのだった。
コンゴ共和国の首都ブラザヴィル(キンシャサの川向こう)から西南西約390km。ブラザヴィル~ポワント・ノワール間、飛行機で約2時間という。 |
さらに拡大地図でポアント・ノアール湾を見ると、
Baie de Pointe-Noire(ポアント・ノアール湾)とポアント・ノアールの町 |
なんだか、ゴミ箱をひっくり返したようなアフリカの大都市、キンシャサとはまるで違うイメージを持ってしまう。
ポアント・ノアール沖にはなんと、イルカやクジラが集まってきていたから、ホェール・ウォッチング・クルーズもできたという話を聴きながら、わたしは、クジラが登場する、カラフルで壮大な絵が魅力的な絵本、”沖釣り漁師のバートダウじいさん”の大ぼら話(!)を思い出していた。
絵本 ”沖釣り漁師のバートダウじいさん” |
この絵本もまた、娘が25年も前に幼稚園で出会って大好きになってしまい、我が家の本箱の一員になった絵本だ。
きっと、娘は、大きな波をたくましく進むカラフルな船とカラフルな合羽を着込む漁師が描かれた表紙からして気に入ってしまったのだろう。
絵と文は、ロバート・マックロスキーさん!
「かもさんおとおり」、「サリーのこけももつみ」、「海辺のあさ」、「すばらしいとき」でも楽しませてくれるアメリカの絵本作家だ。そして、訳はまたお馴染みの渡辺繁男さんでもある。
バートダウじいさんは、口うるさいけどしっかりものの妹と海辺の町に住んでいる。
庭には、引退した舟がリペインティングされて花壇に仕立てられ、ゼラニウムなどの花がこれまたカラフルに咲き乱れている。
(何度もこの絵本を娘、息子に読んでいるうちに、この廃船花壇の場面に来ると、どんな花かも知らないのに、呪文のように「ゼラニュ~ム」、「ゼラニュ~ム」と連呼していたことを懐かしく思い出す。)
ある日、バートダウじいさんはぽんこつ愛船、”潮まかせ号”に乗って沖へと繰り出した。
そこでかれの釣り針に引っかかったのが大きなくじらだった。
じいさんは、傷ついたくじらの尻尾にバンソウコウを貼ってやるのだった。
そして嵐に遭い、くじらに呑み込まれる。
くじらに呑み込まれてもちっとも恐怖なんか感じない。
くじらのお腹の中って、カラフルな洞窟みたいなところなんだなあ、わたしもクジラに呑み込まれてみてもいいかも、なんて幼心にあれやこれや想像して、バートダウじいさんの世界にそれこそ、”呑み込まれて”いくだろう。
クジラのお腹から見事に脱出したじいさんが見た光景とは!
カラフルなでっかいクジラたちが、バンソウコウを貼ってもらおうと順番待ちしている光景に微笑んでしまう。(このバンソウコウを張ってあげる、ということにも娘の目には魅力的に映ったようだ。その証拠に、我が家のぬいぐるみにはしばらくの間、バンソウコウらしき白テープが張られていた。)
そして、こんなにたくさんのクジラたちが集まってもまだまだ余裕のある海原!
海ってでっかいんだなあ!!、と改めて感じ入ってしまう場面でもある。
海を股に掛けて生きてきたバートダウじいさんの漁師としての仕事の終わりも間近だろう。
かれの愛船の名前のように、毎日の天気まかせ、潮まかせ、そして気分まかせで歩んできた漁師人生だったのかもしれない。
そんなかれの長い漁師人生の中での経験を、ちょっと脚色されて、楽しいほら話としてわたしも子どもたちと一緒にたくさん聴きたいものだ。
アフリカ大陸の中西部にあるポアント・ノアールPointe-Noireの町にも、バートバウじいさんと、しっかりものの妹そっくりのコンゴの兄妹が住んでいて、沖釣り漁師で生計を立て、沖ではクジラと交流して、こんな物語のようなことが起こっているのかもしれない、と想像してしまうのだった。