キンシャサに着いた今年1月1日。リビングでやれやれ・・とくつろぐわたしに、夫から「ホレッ!」と1冊の本を手渡されたのが、この「Le Paradis des BONOBOS」(Seuil jeuness 刊)だった。
コンゴ民主共和国のしかも限られた4州にしか棲まない、人間に最も近いと言われる類人猿・ボノボの保護のためにNGO活動を展開するフランス人女性(ベルギー人かも)、Claudine Andreさんが監修して出版された本だ。
クロディーヌさんと、彼女たちのグループ、ABC(les Amis des Bonobos au Congo)が運営するサンクチュアリ,”Lola Ya Bonobo"で保護されているボノボたちと一緒に写った写真がこの本をめくると載っている。 当初、ボノボたちのサンクチュアリはキンシャサのアメリカンスクール敷地内にあったが、後にキンシャサ郊外の森を買い取り、ボノボたちがより喜びそうな環境へ移転したそうだ。
”Lola Ya Bonobo"は現地の言葉、リンガラ語だ。フランス語では、”Le Paradis des Bonobos"。まさにボノボの楽園だ。
夫は昨年夏、ボノボの楽園を訪れた時に、売店でこの本を購入。わたしがキンシャサに来たときにプレゼントしようと思って取っておいたのだそうだ。
そして、とうとう、先月、わたしはこの"Lola Ya Bonobo"に行って来た。
水辺が好きで、木々を軽々と飛び移るボノボたちにうってつけの環境だった。ボノボたちは、果物、葉っぱ、木の実、小さな虫たちを食糧とし、狩はせず、とても繊細な平和的な動物だそうだ。地上では、2本足歩行もし、すっきりした体型で、観察していると本当にわたしたち人間に似ている。
彼女の父親がコンゴで獣医さんをしていて子どもの頃コンゴで育ったのだそうだ。そういう環境下にいたから物心ついたときから自然や動物達が身近にいたのだそうだ。4歳の時には1匹の小猿さんと仲良しだったそうだ。
そして、彼女が47歳の時キンシャサの動物園で、両親を食肉用に殺されて衰弱したボノボの孤児を売ろうとしていた人から引き取り、助からないだろうと言われたそのボノボ孤児の命を救った、ということから彼女の闘いが始まった・・・という。
次項から、ボノボの動物学的な位置づけ、ボノボの特徴と絶滅状態にある現状について、ABCが運営する"Lola Ya Bonobo"の案内と役割について、そしていよいよボノボを森へ還す時のことがイラスト入りで分かり易く説明され、最後にこれからの展望~観光に力を入れたら良いこと、若い世代にボノボを知ってもらうためにサンクチュアリに招くことなど~で締めくくられている。
何よりも、人間にいちばん近い類人猿、ボノボの存在を多くの人々に知ってもらい、コンゴ民主共和国の限られた場所にしか生息していず、コンゴ民主共和国の国力が衰退し国民の生活苦からボノボが絶滅の危機に瀕していることなどの実情をPRしてゆくことだろうなあと感じた。
この本には、サンクチュアリで撮影されたボノボの可愛らしい写真がたくさん掲載されているのも魅力だ。
そろそろ、日本ではゴールデンウィークの話題が出始めるころだろう。そのころから、わたしは「夏の絵本屋」の準備に本格的にとりかかっていた。
昨夏は、レイチェル・カーソン著「センス・オブ・ワンダー」を下地にした選書だった。
今夏は、残念ながらコンゴにいるから見送りだ。
もし、「夏の絵本屋」を今夏も開店できていたら、間違いなくこの「Le Paradis des BONOBOS」の本を紹介するのになあ。
ぜひ、皆さんにコンゴに棲むボノボたちのことを知ってもらいたい。