2020年11月28日土曜日

絵本”いつも ふたりで” ~ 夫婦で歩んできて

 昨日から、本箱の絵本”いつも ふたりで”を引っぱり出して読み返しています。


ジュディス・カー作、亀井よし子訳。
ブロンズ新社からの出版です。


おばあちゃんは、ひとりソファで何かを待っている、という場面で物語は始まります。

お茶の時間を待っているの?
いいえ。
かのじょは、今では天国にいる夫が毎日午後4時から7時のあいだ、せなかの翼を広げて戻ってきて、二人でいろんなところへ出かけて行くのを待っているのです。

おばあちゃんったらソファでうとうとしてる、なんて思ってない?
いいえ。
かのじょは、夫といっしょにいろんなところに出かけて二人で楽しんでいるのです。

おばあちゃんの本音も語られています。
夫と二人で、こことは別の世界に行って、あの幸せだった日々を生き直したいと思うこともあるわ、って。
いつも、ふたりでいたいから、って。

毎日、今でも二人は午後4時から7時の間、共に過ごしているのです。


この絵本のページをめくると、さいしょに、

     ”わたしのトムへ”

と書かれています。
「いつも ふたりで」の作者、ジュディス・カーは1923年ベルリン生まれ。ナチスの迫害を逃れてスイス、フランスと渡った後、イギリスで脚本家のトム・ニールと出会い、3人の子どもを育てながら絵本作家として活躍した女性なのだそうです。
2006年に50数年共に歩んだ夫が天国へ。
この絵本は、夫トムに捧げた絵本なのでしょう。
日本では、2011年に翻訳されて初版が出ています。


さて、この絵本をなぜ紹介しようと思ったのか、というと・・・。

今週で、わたしの毎朝の楽しみだったNHKテレビ小説「エール」が完結しました。
裕一と音(おと)の夫婦が戦争を挟んで昭和の時代に音楽とともに生きてきた人生を描いたドラマでした。
そして、物語の終幕の描き方に大きく感動しました。

妻である音(おと)がベッドに横たわる最期の場面で。
音(おと)が言います。
「海が見たい。あなたと出会った頃のように。歌を歌ったり。」
「わかった。行こう。」
ふたりはゆっくりと病室の床に足を下ろしてぽつり、ぽつりと歩を進めると・・・。
木の床がいつしか砂地になって、二人の歩も力強いものに変わっていって浜辺に移って・・・二人の出会った頃に戻って海辺をのびやかに走っているのです。
海辺に置かれたオルガンを裕一が弾いて、音が歌って、ふたりが輝いていたあの頃にもどり。

「出会ってくれて、ありがとう。」
「わたしも。あなたといられて、しあわせでした。」

夫婦で伴走してどんなことにも乗り越えていく力強い姿をこの絵本とこのテレビドラマに感じました。
人生は過ぎてしまえば短いのだなあ。
だからこそ、わたしも一生懸命に誠実に生きてゆくぞ!、と思うのです。
最期に、感謝の言葉を言いたいから。