上智大学「Africa Week」のポスター(馬野晶子氏facebookより) |
娘の母校、上智大学で、「Africa Week」と題されて、アフリカを多方面から捉えて見つめてみようという企画が、5月22日から26日まで開催中だという。
なんとうれしい企画だろう!
その中に、「アフリカの子どもたちと文学」と題された企画を見つけた。
残念なことに、この企画は23日の17:00~18:30に開催され、すでに終了している。
「本企画では、アフリカ各地に広がる豊かな民話について、特に絵本を中心に西アフリカの児童文学を紹介します。」と書かれていて、文学部フランス文学科の学生有志によるカメルーンの民間伝承をフランス語で語る(日本語字幕あり)というプログラムも用意されていたのだそうだ。
また、会場では、アフリカの絵本や絵画の展示も行われる(期間中の展示?)と紹介されている。
主催は、上智大学教育イノベーションプログラム。
特に気になったのは、アフリカ文学研究者の村田はるせ氏による「アフリカの絵本ってどんなの?」と題された講演だ。わたしの記憶に間違いがなければ、村瀬氏は西アフリカのベナンの児童文学を中心にアフリカ児童文学を研究しているかただ。
わたしも聴きたかったな。
わたしの名前の”Iroko”~イロコの木も登場するというベナンの物語についても質問したかったな。
"La Perruche, L'iroko et Le chasseur"~「 インコとイロコと狩人」表紙 |
アフリカのほとんどの部族が独特の書き言葉を持たない中、旧宗主国の言葉である英語やフランス語が公用語として用いられていて、さらに口承文学と言われるアフリカで、どのように絵本や物語が出版されているのか。現状を知りたいと思う。
コンゴ民主共和国の児童文学の出版状況は貧弱なもので、わたしたちがキンシャサ生活を始めた2012年のころはキリスト教の出版社のパウロ社の出版物を見かけたくらいだった。
2012年当時のパウロ出版キンシャサの本屋内 |
その後、パウロ書店はごみごみした商店街の一画に移転し、売り場面積も縮小してしまったが、地元の人々の住む地域で、小さいながらもいくつかのパウロ書店が活動しているのを見かけてはホッとしたりしている。
また、6月30日通りに面したところに(2014年だったか)大きな本屋も開店した。
”LIVRES POUR LES GRANDS LACS”(湖水地方の本屋、と訳すのか) というコンゴ民主共和国の本屋だ。キンシャサに2店舗、Bukavu、Kinduにそれぞれ1店舗の計4店舗を構えているのだそうだ。
でも、児童文学のことを訊くと、3,4冊を出してきて、漫画っぽいもの、戦争のような戦ものの内容のもので、がっかりしてしまった。
下の写真は、先週、コンゴの地図を探すために訪ねたLes Grands Lacs本屋の店内の様子だ。
”LIBRES POUR LES GRANDS LACS”本屋の店内と店員さんたち |
もちろん、ここで、「インコとイロコと狩人」の本のことも尋ねたが、探し当てることはできなかった。
コンゴの国の公用語は旧宗主国がベルギーだから、フランス語だ。
そして、国語として、リンガラ語、スワヒリ語、キコンゴ語、チルバ語の4言語が存在する。
そのどの言語を使って絵本や物語を出版するのか。また、出版費用に見合い庶民の手の届く範囲内での価格設定のこともある。問題は山積みだ。
最後に、お月さまのことに触れてみたい。
日本では、お月さまには「二匹のうさぎが餅をついている」と教えられ、その歌も存在している。
マリ出身のトアレグ族のひとりの女性から、「わたしたちは、お月様には針仕事をしているおばあさんがいる」と聴かされて育ったという話を聞いた。そして、その歌も存在したのだそうだ。
では、コンゴでは。
ウェッツさんという慶応大学日本語プロジェクトで日本語を習得し、日本人以上に尊敬語を上手に操るコンゴ人の若者から聴いたところでは、「お月さまには、お母さんが子どもをかたぐるましている」と考えるのだと言うのだ。
なんと興味深いことだろう。お父さんではなく、お母さんと子ども、と聞いて、ボノボ(ヒトにいちばん近いといわれる霊長類)が母親社会を形成しているということを思い出し、その関連性にひとり勝手に(?)深く感動するのだった。
ただ、この「お月さまの中でお母さんが子どもをかたぐるまする」歌は存在しないということだった。
ウェッツさんが一昨日、キンシャサに長期滞在して日本語プロジェクトで活動する一人の慶応大学の学生と一緒に我が家に遊びに来てくれた。
そのときに、わたしは、日本には「絵描きあそびうた」というのもあるんだよと話した。
この4月に、かるたあそびで日本語を教えるというかれらの授業に参加したので、ひらがなを使っての「絵描きあそびうた」も参考になるかと思ったのだ。さらには、先月読んだかこさとし著の「未来のだるまちゃんへ」という本の中におもしろい絵描きあそびについて、かこさとしさんが触れていたので。
子どもの頃、多くの方が「へのへのもへじ」で顔を描いて遊んだことだろう。
地方によっては、ちょっと違うひらがなが使われていたりして、そこに興味を持ったかこさんは日本全国の絵描きあそびうた収集をライフワークにしていると書かれていた。
あるとき、女子高で講演したときに教えられたのが、「へめへめしこし」だったというのだ。
ちょっと、この4つのひらがなで人の顔を描いてみてほしい。
なんと!お目目ぱっちりのおちょぼ口の女の子の顔が完成しませんか!
そんなあそびを通して、またこれもひとつの日本独特の子ども文化なのですとコンゴの人々に伝えられて、興味を持って文字を覚えてもらえたら、などと思って、日本語プロジェクトで活動するコンゴと日本の若者に話したのだった。
そして、できたら、わたしもこの国に伝わる子どもの文学やあそびや歌を知りたかったな。
もう時間切れだけど。
でもまたいつかきっと。
と、上智大学のAfrican Weekの企画の話から、逸脱してしまったが、アフリカの子ども文化について、これからもわたしは観続けていきたい。
もし、情報がありましたら、ご教示ください。