題名からして、真反対の内容のような絵本だ。
我が家の子どもたちが大好きだった絵本の中で、代表格と言ってくらいよく読んで楽しんだ絵本の二冊である。
絵本”わたしと あそんで”(福音館書店) |
絵本”きみなんか だいきらいさ”(冨山房) |
わが家の本箱からこの2冊の絵本を眺めるたびに、「夏の絵本屋」での一つの出会いを思い出す。
絵本屋開店中のある日、ひとりの女性が入ってこられた。
そしてすぐに、お子さんのお友だちのプレゼントに絵本を選びたいのだが、お勧めはないかと訊かれたのだった。
女性は、あれやこれやと探すわたしの背中に、ぽつぽつと話し始めた。
お子さん同士のプレゼントと言っても、実際は、母親同士のプレゼントなのだと。
障害を持っているお子さんたちを持つ母親同士、ちょっとユーモアを持って。
お子さん同士のこれからの関係に願望をこめて、楽しいジョークを持って。
そんな絵本選びをしたい。
そう話された。
だったら。
まず、「わたしと あそんで」。
ひとりの女の子が森に入って小動物たちにわたしとあそんで、と寄っていくのだけど、かれらは散ってゆく。
がっかりして池のふちに座っていると、今度は、そっと皆がわたしの周りに寄ってきた。
にこにこ笑顔の女の子は言う。
うれしいな。
とびっきり、わたしはうれしいの。
それから、もう一冊の「きみなんか だいきらいさ」
ふたりの男の子は実は大の仲良し。
でも、ひょんなことでけんかしたのだろう。
片方の男の子が、もう片方の男の子のいやなことばっかり並べたてる。
もうだいっきらい!
ぜったいに遊んでなんかやらない!
大決断をする。
さんざん、さんざん、いやなことばっかり並べたてて、きみなんかぜっこうさ!と伝えに行く。
なのに。
やっぱり、仲良しなんだ。
絵本の題名は、真反対。
でも、どちらも、紆余曲折はあるけど、最後は円満仲良し。
女性は、この絵本二冊をプレゼント用に選ばれた。
ユーモアたっぷり、良い絵本の組み合わせになったと、とても満足されて帰って行かれた。
女性を見送って、わたしもほっと和むひととき。
二組の母子の穏やかな日々が続きますようにと祈った絵本屋での思い出だ。