その歌を下地に、さだまさし自身が執筆して小説になり、さらに映画化され、最近、全国で上映が始まった「風に立つライオン」を観に行った。
アフリカの風景がしっかりと描かれ、心に染み入る、感動的な映画だった。
映画は、アフリカの大地に沈む夕日、村全体が夕焼け色に染まる美しい風景で終わった。
人間の営み、それぞれに与えられた人生について、しみじみ、しみじみ、考えさせられて、涙があふれた。
そんな、アフリカの大地が夕焼け色に染まる場面が美しく描かれた、わたしにとって宝物のような絵本を紹介したい。
あべ弘士 絵 「だれかが ほしを みていた」 (アスク・ミュージック) より |
この絵本の画家、あべ弘士氏は、長いこと北海道の旭山動物園で飼育係として働き、動物の動きを間近で観察してきた人だ。
絵本「だれかが ほしを みていた」の中で、サバンナの夕焼けの中を群れをなして移動する動物の立ち姿、シルエットを描くページは圧巻だ。
なんともさっくりしたラインで、夕陽に映える動物を黒く描き、野性的でいて、なぜかやさしい風景に仕上げている。
空には、サバンナの大地にトロトロと溶けるように沈んでいく大きくて真っ赤な夕陽が大きく描かれている。本当にきれいな夕焼け空だ。
溶けるような夕陽の輪郭の描きかたにも、アフリカらしいダイナミックさを感じてしまう。
アフリカの夕暮れから夜に変わる瞬間。
風景の色合いが、赤色から紫色に変わる一瞬があるのをご存知だろうか。
アナ・フアン 絵 「ぼくのだいすきなケニアの村」 (BL出版) より |
この物語「ぼくのだいすきなケニアの村」は、長い間、アフリカに暮らし、現在は米国に住む、ケリー・クイネンによって書かれている。
ケニアのある村に暮らすカレンジン人の少年の一日が、ページからはみ出さんばかりに元気いっぱい描かれる。
この少年が、村に住む人々と交流しながら、じいちゃんと牛の見張り番をし(遊ぶのに夢中になって見張り番を忘れてしまったりもするのだが。)、一日を終えて帰り着くと、家の前で、かあさんが迎えてくれる。
外は、もう、夕暮れから夜に変わろうとしている。
赤色から紫色に変わる一瞬の、この時間。
その微妙な色合いが美しく描かれるページだ。
そして、アフリカの大地にどっかり立って、男の子を受け留めるかあさんの後ろ姿が、さらに夕焼けから夜に移行する時間の美しさを大きくしている。
幸せな男の子だな。
一日の最後に、温かな寝床が待っていることほど幸せなことがあるだろうか。
夕焼け、って生きる者たちの平和の象徴なのかもなあ、なんて思ってしまう。
一日を楽しく過ごしたあと、ぬくもりのある家族の待つ家へ、そして、温かな寝床のある家へ帰ることのできる幸せを、地球上の全ての子どもたちが味わってほしい、と思う。