料理を運ぶ少女(後方)がゼラルダ |
かれこれ20年以上も前に、この絵本、”ゼラルダと人喰い鬼”の主人公、ゼラルダという可愛らしい料理名人に憧れた女の子がいた。
そのゼラルダは、フランス(?)の田舎の農家に父親と二人で暮らし、6歳のころにはすでに一通りの料理を作ることができた。
父親が丹精込めて作った農作物や酪農品を荷車に積んで町へ運ぶ日、父親が病気になってしまい、多分まだ6歳だか7歳だか8歳だかのゼラルダが野を越え山を越えて、売り物たちをいっぱい積んだ荷車を引いて1人で町に向かうことになった。
一方、町では人間でもまだ肉の柔らかく臭みのない子どもを大好物とする人喰い鬼が、子どもをさらって食べるので、親たちは子どもたちを自宅に監禁し、町には人っ子一人姿を見せなくなっていた。
食糧としての子ども達が消えてしまったので、腹を空かせた空恐ろしい顔をした人喰い鬼が、山道を歩いていて小さな女の子、ゼラルダを発見!!
しめたっ!!
久しぶりにおいしい人間の子どもにありつけるぞ!!
ところが、あまりにお腹が空きすぎて脳震盪を起こし気絶した人相最悪の人喰い鬼、とは知らない我らがゼラルダは、あら、かわいそうなおじさんだこと、きっとお腹が空きすぎているんだわ、と可愛らしい誤解をし、荷車の商品を全部使って人喰いおじさんのためにちゃちゃっ、と豪華ご馳走を作り上げた。
世の中に人間の子どもよりうまい、こんな美味しいものがあったのか、と料理をすべて平らげ感動の渦中の人喰いおじさんは、かれのお城にゼラルダとお父さんを、専用料理人として招き入れた。
ゼラルダの作る料理に参ってしまった人喰いおじさんとその仲間たちは、人間の子どもを食べることをすっかり忘れてしまった。
忘れてしまったどころか、あれだけ恐い最悪人相をしていたおじさんがにこにこ顔のおじさんになり、街じゅうにまた溢れ返った子どもたちに、キャンディーまで与えたりして、すっかり平和な町になった。
やったね!でかしたぞ!我らがゼラルダ!!
小さく可愛いゼラルダが作る料理をごらんあれ!!
各料理に番号が付いて、名前の注釈が添えられている |
さて。
ゼラルダに憧れた少女はこのページを開いてはうっとり眺め続けていた。
右ページ上の赤いパンプスを履かせられた、”七面鳥の丸焼きシンデレラ風”には特に魅せられたらしく、このページに穴が空くのではないか、と思われるほど、時間さえあれば、というか時間を捻出しては、このページをうっとり眺め続けた。
そうして、ゼラルダもその女の子も、6歳、7歳、8歳・・・・・と歳を重ね、料理名人、に近い(!)、料理大好きな女性となり、ワインが大好きで、ワインに合うおつまみなんかもちゃちゃっと作る女性になった。
ゼラルダは、魅力的な女性に成長し、あの強面の元・人喰いおじさんはとっても良い人になって二人の間に愛が芽生え、ついにかれらは結婚した。
そしてこの絵本の最後のページでは、二人の可愛い男の子と、生まれたばかりのこれまた愛らしい女の赤ちゃんを抱っこした魅力的なゼラルダ母さんと、更にまた幸せ満面、にこにこ笑顔のステキな(元・人喰い鬼)父さんの、こんな幸せ家族がいるのかと羨むくらいの5人家族が一枚のページに収まっている。
ところで。
ゼラルダに憧れ続けた少女も、魅力的な(母は信じている!)女性となり、人は決して食わないけれど、甘いものが大大大好物の、改心後のゼラルダのダンナサマに瓜二つのフランスの男性と出会い、恋が芽生え、結婚し、そして玉のような女の子が生まれ、南フランスのとある町で幸せに暮らしています、とさ。
ゼラルダ一家の次男(?)は、我が妹を美味しそう・・・と見つめていて(背後にフォークとナイフを隠し持っていたりして。)、血は争えない、というか何と言うか・・。
作者のユーモアがまた楽しい最後のオマケ付きだ。
ゼラルダ母さんの料理の腕できっと一家は後々まで末永く幸せに仲良く暮らしたことでしょう。
最後に。
この絵本の表紙に描かれる人喰い鬼、ってこんなに恐い顔をしていたのだ。
ゼラルダと人喰い鬼(トミー・ウンゲラー作 評論社) |
どうぞ、お楽しみあれ!!
しつこく追伸。
ゼラルダに憧れ続けた女の子。
わたしの料理好きは、母の影響では決してなく、”ゼラルダと人喰い鬼”のゼラルダと、”リーヌスくんのお料理教室”(文化出版局 絶版)のリーヌスくんのお陰なんです、と言っているのだとか。