ネパールの首都、カトマンズのラジンパットという地区に、とても大きな木のある白い家がありました。
そこに、日本から来た女の子が両親と住んでいました。
お父さんは、女の子のために木片とビニルロープで簡易(!)ブランコを作り、太い木の幹にロープを結んでくれました。
女の子はいつもいつも、ブランコを空高く空高く漕いで遊んでいました。
お母さんは、いつかこの子はヒマラヤの山々まで飛んでいくのではないかと思うほどでした。
そして、女の子は、大きな木の幹にするすると登る楽しみも覚えました。
幹に登って、はるか遠い空に浮かぶ白いヒマラヤをじっと見ているのでした。
女の子が日本に戻って、初めて幼稚園に行く日のこと。
女の子は、天使園という幼稚園の小さな園庭に何本かの木が植えられていることを見つけ、早速木の幹に登りました。
園長先生がやってきました。
女の子は園長先生に、こっちに来てごらん、おもしろいよ、と声を掛けました。
ちょっと歳を取った園長先生が梯子を持ってきて、どらどら~、と登って来たのだそうです。
女の子は木に登って来てくれた園長先生と天使園がこの時から大好きになりました。
女の子が住む家の裏の「しいの木公園」には、名前の通り、大きな椎の木がありました。
女の子は、その木に二つの幹が交差して座り心地の良いスペースがあることを見つけました。
そして、幼稚園から帰ると、バッグに水筒とおやつを詰めて、小さな座布団を抱えてしいの木公園に向かうのでした。
おやつの時間を椎の木の上で過ごすためでした。
周りの大人たちはあまりいい顔をしませんでしたが、女の子の幸せそうな顔を見て、お母さんは女の子の至福の時期を大切にしてあげようと思いました。
女の子がお母さんから読んでもらって大好きになった「長くつ下のピッピ」のピッピの真似をしたのかもしれません。
木に登って遊ぶ女の子 山脇百合子絵 |
「木はいいなあ」という、わたしの大好きな絵本があります。
最初から最後まで、「木って本当にいいなあ~」というメッセージがぎっしり詰まった絵本で、読む側も素直に「ホントになあ~、木って良いもんだなあ~。」としみじみ思ってしまうのです。
絵本 ”木は いいなあ” (偕成社)
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わたしの大切な絵本です。
挿絵がなんだか日本画のタッチですが、画家は、マーク・シーモント。
フランス パリ生まれのスペイン人で、3年前に97歳で亡くなっています。
作家は、ジャニス・メイ・ユードリー。
アメリカ イリノイ州生まれで、大学卒業後に保育園に勤務とあり、この絵本の内容から納得してしまったのでした。
アメリカの、絵本の権威あるコルデコット賞も受賞しています。
今、わたしが住むアフリカ、世界三大熱帯雨林の地域、キンシャサにも都会ではありますが、あちこちに大木があり、庶民の憩いの場になっています。
大木の下には、カフェや床屋が店びらきされています。
キンシャサ 大きな木の下の床屋さん |
ここにはマメ科の木が多いように思います。
火炎樹、アカシア、ウェンゲ、・・・。
わたしたちが毎朝呑むモリンガの葉の粉、そのモリンガの木もマメ科です。
もちろん、ヤシの木、シュロの木もあるし、マンゴ、パパイヤ、アボカドなどのおいしい果実をプレゼントしてくれる木もあります。
ウェンゲは、マメ科ナツフジ属でアフリカ黒檀とも言われて堅い木で高級家具や楽器に使われる木です。
今、キンシャサのゴルフ場はウェンゲの紫の花が満開で、ウェンゲの大木の下は紫の絨毯が敷かれたように美しいです。
ゴルフ場 ウェンゲの大木 2014年撮影 |
「木」、でいろいろなことが思い出されます。
わたしの名前は、HIROKO。
中央アフリカ共和国のバンギに住んでいた時、”Hotel Iroko”というホテルがありました。
フランス語では”H”は発音されないから、わたしは「イロコ」と言われていました。
現地に住む女性から、きれいな名前ねえ、女の子が生まれたらイロコっていう名前にするわ、と言われたことがあります。イロコという香りの良い木があるのよ、と。
そして、キンシャサに来て、"Iroko"という木の存在を再度、耳にしました。
わたしが前回、キンシャサを発つ前に、コンゴの木工職人のムッシュが、Irokoの木で作ったブレスレットをプレゼントしてくれました。
M.Auguyさんからのイロコの木のブレスレット |
あらためて、木はいいなあ、と思います。
カトマンズで毎日ブランコを漕いで、木に登って楽しんでいた女の子は、今、アルプス地方に住んでいます。
あの頃の女の子そっくりの元気な女の子のお母さんです。